トライアスロンの距離は、スプリントが合計25.75km、スタンダードが51.5km、IRONMAN が226kmです。どの距離でも、道のりの8割近くは自転車。競技規則が道具の形まで決めているのも、ほとんどが自転車とヘルメットとウェットスーツの3つです。
シューズオタクの本命
先に買うのは、ゴーグルとヘルメットとナンバーベルトの3つ。どの大会でも、水温が何度でも使うと規則から言えるのが、この3つだからだ。ウェットスーツとトライスーツは、水温しだいで要る・要らないが入れ替わる。申し込む大会の要項を読んでから決めればいい。
この記事の要点
- スタンダード51.5kmのうち自転車は40kmで、道のりの約78%。スイムは約3%しかない
- 一般の部でウェットスーツが禁止になるのは、スイム1500m以下なら水温22℃以上。義務になるのは15.9℃以下
- フラットバーの自転車は規則では禁止。初心者向けの大会だけ、大会の規程で認められることがある
「泳ぐのが大変な競技」という見方は、距離の表で崩れる
トライアスロンと聞くと、まず海を泳ぐ場面が浮かびます。ところが距離を足してみると、スタンダード51.5kmのうちスイムは1.5km。道のりの約3%です(1.5 ÷ 51.5)。
いちばん長いのは自転車で、40km。約78%を占めます(40 ÷ 51.5)。IRONMAN の226kmでも、自転車は180kmで約80%でした(180 ÷ 226)。
この比率は、道具の決まりの量にもそのまま出ています。競技規則を読むと、形や寸法まで細かく決められているのは自転車まわりです。だからこの記事は、距離 → 規則 → そろえる物 → お金、の順に進めます。
読んだ規則と、その版
日本の大会の土台になる規則は、jtu.or.jp で公開されている「トライアスロンジャパン競技規則」です。読んだのは2026年度版。巻末に「2026年2月発行」、附則に「2026年3月1日より施行」とあります。
検索では「JTU 競技規則」と呼ばれることが多い文書です。発行者の名前は、いまの版では「公益社団法人トライアスロンジャパン」になっています。
この規則は、世界の統括団体ワールドトライアスロンの規則を採り入れて作られています。大会ごとの細かい決まりは、それぞれの大会の規程が上書きします。下の表は「土台はこう書いてある」という読み方をしてください。
距離の区分:7つを1枚の表に
上の5つは競技規則の附則Aの区分、下の2つは IRONMAN 公式サイトの数字です。合計は、3種目を足して出しました。
表は横に動かせます →
| 区分 | スイム | バイク | ラン | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| スーパースプリント | 250〜500m | 6.5〜13km | 1.7〜3.5km | 8.45〜17km |
| スプリント | 750m | 20km | 5km | 25.75km |
| スタンダード | 1500m | 40km | 10km | 51.5km |
| ミドル | 1900〜2999m | 80〜90km | 20〜21.9km | 101.9〜114.9km |
| ロング | 3000〜4000m | 91〜200km | 22〜42.2km | 116〜246.2km |
| IRONMAN 70.3 | 1.9km | 90km | 21.1km | 113km |
| IRONMAN | 3.8km | 180km | 42.2km | 226km |
表を並べると、2つのことが分かります。1つ目。スタンダードは、スプリントのちょうど2倍です(25.75 × 2 = 51.5)。3種目とも2倍になっています。
2つ目。IRONMAN 70.3 の3つの数字は、どれも規則の「ミドル」の幅に収まります。IRONMAN の3つは「ロング」の幅の中です。「70.3」は合計のマイル数で、1.2 + 56 + 13.1 = 70.3 になります。
IRONMAN の226kmは、スタンダードの約4.4倍です(226 ÷ 51.5)。同じ競技の名前でも、道具に求められる時間の長さがまるで違います。
最初の1レースの道具は、スプリントかスタンダードを前提に考えれば足ります。
読者が見落としやすい仕組み:ドラフティングで自転車が変わる
ドラフティングは、前の選手のすぐ後ろに入って風をよけて走ることです。規則は、これを「許可するレース」と「禁止するレース」に分けています(第99条)。
一般の部(エイジグループ)は、スーパースプリント、スタンダード、ミドル、ロングが「禁止」。スプリントだけ「許可と禁止」の両方があります。第100条は、一般大会とロングの大会を禁止のレースとしています。
そして、どちらのレースかで、使えるハンドルと車輪が変わります。ここが、自転車を買う前に知っておきたい所です。
| 項目 | 禁止のレース | 許可のレース |
|---|---|---|
| ハンドル | ドロップハンドルが基本。前輪の先を超えない長さなら、後付けのバー(クリップオンバー)を使える | 昔ながらのドロップハンドルだけ。クリップオンバーは禁止 |
| ブルホーン型 | 使える | 使えない |
| 車輪 | 後輪のカバー(ディスクホイール)を使える。強風の日は禁止になることがある | 一般の部は、スポーク12本以上。ディスクホイールは使えない |
| フラットバー | 禁止。マウンテンバイクの大会と初心者向けの大会は、大会の規程による | |
ドロップハンドルは、下に曲がったロードバイクのハンドルのこと。フラットバーは、クロスバイクに付いているまっすぐなハンドルです。
つまり、ふつうのロードバイクなら、禁止のレースにも許可のレースにもそのまま出られます。後付けのバーやブルホーン型のハンドルが付いた自転車は、許可のレースには出られません。だから私は、1台目にはロードバイクを選びます。
道具の決まり:条文の番号つきの一覧
規則の中から、道具を買うときに関わる条文を拾いました。
| 道具 | 決まり | 条文 |
|---|---|---|
| ウェットスーツ(着るかどうか) | 安全のために着ることを勧める。水温が低いときは義務にすることがあり、スタートの前に掲示で知らされる | 第72条 |
| ウェットスーツ(水温) | 一般の部・59歳以下:スイム1500m以下は22℃以上で禁止、1501m以上は24.6℃以上で禁止。どちらも15.9℃以下で義務 | 第73条 |
| ウェットスーツ(形) | 厚さは5mmまで。手首と足首から先を覆わない。下半身だけの形は不可。浮力を足す加工は不可 | 第67条 |
| スイムキャップ | 大会から渡された公式の物をかぶる。2枚重ねるときは公式の物を外側に。名前を書くのも不可 | 第63条 |
| スイムで禁止の物 | 足ひれ、パドル、浮く道具、手袋、靴下、シュノーケル、ガラスの製品、イヤホン | 第70条 |
| ヘルメット(物) | 自転車競技用の硬いヘルメット。JCF 公認、EN1078、CPSC などの基準に合う物を勧める。ひび割れ、あごひもの作り替えは禁止 | 第97条 |
| ヘルメット(あごひも) | ラックから自転車を外す前に締める。ゴールして自転車をラックに掛けてから外す | 第85条 |
| ウェア | バイクとランでは上も下も着る。上半身が裸のまま乗る・走るのは禁止 | 第39条・第88条・第117条 |
| 前のファスナー | 一般の部と、ミドル・ロングの大会では、前にファスナーのあるウェアを使える | 第39条 |
| レースナンバー | 大会が渡したときは、指示どおりに着ける。ウェットスーツ禁止のスイムでは着けて泳げない | 第117条・第70条 |
| イヤホン・携帯電話 | ヘッドホン、通信の機械、録画の機械は使えない。大会が認めた場合を除く | 第47条 |
| ランの靴 | ランニングシューズが基本。はだしは禁止。ヘルメットをかぶったまま走るのも禁止 | 第117条 |
3つ補います。まず水温。一般の部でスイムが1500m以下の場合、着るかどうかを自分で決められる幅は、16.0℃から21.9℃までの約6℃です。それより冷たければ義務、温かければ禁止になります。
次にゴーグル。形や色を決めた条文はありません。効いてくるのは「ガラスの製品は禁止」の一文だけで、樹脂のレンズのゴーグルなら当てはまりません。
最後にナンバーベルト。この言葉は、規則の本文に出てきません。あるのは「指示どおりに着ける」と「ウェットスーツ禁止のスイムでは着けない」の2つ。泳ぎ終えてから腰に巻くだけで両方を満たせるので、ベルトが使われています。
レースナンバーベルト
楽天市場で見るヘルメットは「いつ締めるか」まで決まっている
自転車の決まりの中で、初めての人がいちばん引っかかりやすいのがあごひもです。条文は、締める時点を「ラックから自転車を外す前」と書いています。乗る前、ではありません。
外す時点も同じ考え方です。降りたあと、自転車をラックに掛けてから外します。かぶる前にあごひもをつないでおくことも、第85条で禁止されています。
だからヘルメットは、借り物より自分の頭に合った物を1つ持つのがいい、と私は考えます。あごひもの長さを前の日に合わせておけるからです。条文も「合っていない物」を認めていません(第97条3項)。
条件に合う例として、OGK KABUTO の RECT を挙げます。公式ページの規格の欄に「JCF 公認」と「EN1078」の2つが並び、どちらも第97条の基準の一覧にあります。
重さは、M/L サイズで260g(メーカーが測った参考の数字)です。
気をつける所は、サイズが M/L(頭のまわり57〜60cm)の1つである点。この幅から外れる人は、同じ基準の表示がある別のモデルを探してください。
OGK KABUTO レクト(RECT)
楽天市場で見るそろえる物の一覧と、値段
3種目と共通の物を、1枚にまとめました。公式の値段は、メーカーの日本公式サイトで読めた物だけ入れています。
| 道具 | 最初の1レース | 公式の値段 | 楽天の値段 |
|---|---|---|---|
| スイム:ゴーグル | 買う | 5,500円(SWANS ASCENDER オープンウォーター偏光) | 2,831〜5,250円 |
| スイム:ウェットスーツ | 借りる | 未確認 | 16,000〜55,000円 |
| バイク:自転車 | 手持ち・借りる | 119,900円(GIANT Contend 3) | 95,200〜296,000円 |
| バイク:ヘルメット | 買う | 11,550円(OGK KABUTO RECT) | 7,350〜11,550円 |
| バイク:シューズ | 買わない | 未確認 | 9,025〜30,261円 |
| バイク:ボトル | 手持ち | 未確認 | 999〜4,390円 |
| ラン:シューズ | 手持ち | — | — |
| ラン:キャップ | 手持ち | 未確認 | 1,555〜5,720円 |
| ラン:ナンバーベルト | 買う | 未確認 | 980〜3,720円 |
| 共通:トライスーツ | 水温しだい | 未確認 | 7,997〜8,980円 |
| 共通:時計 | 手持ち | — | 36,300〜69,960円 |
| 共通:トランジションバッグ | 買わない | 未確認 | 16,830〜81,651円 |
最初にかかるお金を計算する
公式の値段を読めた物だけで、2通りの合計を出します。
| そろえ方 | 式 | 合計 |
|---|---|---|
| ①自転車は手持ち・借り物 | ゴーグル 5,500 + ヘルメット 11,550 | 17,050円 |
| ②自転車も買う | ① 17,050 + Contend 3 119,900 | 136,950円 |
②のうち、自転車が占める割合は約88%です(119,900 ÷ 136,950)。道のりの約78%が自転車で、お金の約88%も自転車。この競技の出費は、ほぼ自転車をどうするかで決まります。
外した物のうち、金額が大きいのはウェットスーツとトライスーツです。上の表の楽天の値段の幅を足して、自分の合計を出してください。
最初の1レースなら、買わなくていい物
言い切ります。次の5つは、最初の1レースのためには買わなくて足ります。
- ウェットスーツ:借りる。規則の扱いは「勧める」で、義務か禁止かは水温と大会の要項で決まります(第72条・第73条)。禁止の日には使えない道具です。申し込む大会の要項を読んでから決めても間に合います。
- トライアスロン専用の自転車:買わない。ロードバイクなら、禁止のレースにも許可のレースにも出られます(第94条)。
- バイクのシューズ:買わない。専用のシューズを義務にする条文はありません。規則が決めているのは、ペダルに先に付けておいてよい、という点だけです(第81条)。
- トランジションバッグ:買わない。規則が求めるのは、道具を決められた場所に、最小の広さで置くこと(第77条)。入れ物の種類は問われません。
- ランのシューズ・キャップ・時計:手持ちで足ります。時計を買い足すなら、電池の時間と値段の表がランニングウォッチの記事にあります。
逆に、手持ちで済ませにくいのが、フラットバーの自転車です。クロスバイクしか持っていない人は、申し込む前に、大会の規程でフラットバーが認められているかを読んでください。認められていなければ、その自転車では出られません。
買う物3つと、次に買う物
選んだ条件は2つです。規則が「自分の物を正しく着ける」ことを求めている物。そして、値段が全体の中で小さい物。
1. ヘルメット
なぜ1番か。無いと自転車に乗れないと規則に書いてあり(第97条)、試走や練習のときも着ける決まりだからです(第85条3項)。レースの日だけでなく、買った日から使います。
気をつける所は、落としてひびが入った物は使えなくなること(第97条4項)。
2. ゴーグル
なぜ2番か。値段が小さく、顔に合うかどうかが人によって違う物だからです。SWANS は公式サイトで「オープンウォーター」という用途の分類を持っていて、偏光と調光の型番が並んでいます。
気をつける所は、調光の型のほうが偏光の型より高いこと。差は、上の表の注に書きました。
SWANS ASCENDER(オープンウォーター用)
楽天市場で見る3. ナンバーベルト
なぜ3番か。ナンバーの決まり2つを、1つの道具で片づけられるからです。気をつける所は、大会がナンバーの着け方を別に指示している場合。そのときは指示が先です(第117条4項)。
次に買う物:トライスーツ
トライスーツは、泳ぐ・こぐ・走るを1着で通すためのウェアです。規則は、ゴム(ネオプレーン)の部分があってはいけない、と決めています(第64条)。ウェットスーツ禁止の日は、ひじから先とひざから下を覆えません。
3つの次に置いたのは、要るかどうかが水温で変わるからです。ウェットスーツ禁止の日は「認定済のトライスーツ」を着る、と第65条にあります(ミドルとロングの大会を除く)。何の認定かは、本文からは読み取れませんでした。
だから、温かい水の大会に申し込んだ人は、買う側に入ります。買うなら、前にファスナーのある型が一般の部では使えます。ウェットスーツを着る大会にだけ出る人は、急がなくて足ります。
バイクとランの決まりは「上も下も着る」だけです(ランニングウェアの記事)。
トライスーツ
楽天市場で見る2レース目から考える物:ウェットスーツ
同じ大会に毎年出る、冷たい水の大会を選ぶ、という人は買う番です。選ぶときに見るのは、規則の3つの数字と形。厚さ5mmまで、手首と足首から先を覆わない、下半身だけの形でない(第67条)。
トライアスロン用ウェットスーツ
楽天市場で見る道具を1つにまとめて運びたくなったら、バッグはそのあとです。
トランジションバッグ
楽天市場で見るランの靴は、規則の文がいちばん短い
ランについての道具の条文は、第117条の4行だけです。ランニングシューズが基本、はだしは禁止、上半身の裸は禁止、ヘルメットをかぶって走らない。
この競技規則の本文には、底の厚さを決めた条文は見当たりませんでした。マラソンの厚底の決まりは、陸上の規則の話です(カーボンシューズの記事)。
種目ごとの道具は、スイムの道具(ウェットスーツ・ゴーグル・トライスーツ)と、バイクの道具(自転車・ヘルメット・シューズ)の記事で、モデルごとの数字を比べています。
よくある質問
クロスバイクで出られますか
規則の上では、フラットバーのハンドルは禁止です(第94条11項)。ただし、初心者向けの大会は「大会の規程による」と書かれています。出られるかどうかは、大会ごとに違います。
スイムで時計を着けたままでよいですか
第70条が時計を名指しで禁止しているのは、エリート・U23・ジュニアの、スタンダード以下のレースです。一般の部は、この禁止の対象に書かれていません。
同じ条に「あらゆる宝飾品」の禁止もあるので、大会の案内に時計の扱いがあれば、そちらが先です。
袖の無いウェットスーツでも規則に合いますか
第67条が求めているのは、厚さ5mmまで、手首と足首から先を覆わない、下半身だけの形でない、の3つです。義務の日は「胴体を覆っていること」が条件になります(第73条)。袖の有る無しは、条文に書かれていません。