HOKA の日本法人が2026年に発売日つきで発表したランニングシューズは3足です。1月30日のシエロ X1 3.0、7月1日のクリフトン 11、7月10日のクリフトン PRO。このうち底まで作り直されたのは2足で、クリフトン 11 は公式が「前作のボトムユニットを踏襲」と書いています。
シューズオタクの本命
新作は、名前の数字ではなく「底が変わったか」で見る。靴の重さと走り心地を決めるのは、甲の布より底のフォームとゴム。発表文の【TECHNOLOGY】欄でミッドソールとアウトソールの行が前の世代と同じなら、前の世代を持っている人が急ぐ理由は薄い。
この記事の要点
- シエロ X1 3.0 は213g。初代の264gから51g軽くなり、値段は38,500円のまま
- クリフトン 11 は282g・19,800円。変わったのは甲の布と中敷きで、底は前作と同じ
- クリフトン PRO は296g・22,000円。クリフトン 11 より14g重く、フォームと底の反りが別物
「2026年モデル」の中身は、3足でばらばら
新作と聞くと、全部が新しくなったように感じます。ところが発表文を読むと、同じ「2026年発売」でも変わった量がまるで違います。
51g軽くなった靴がある一方で、底を前の世代からそのまま引き継いだ靴もあります。この記事は、その差を数字で分けます。
取り上げる条件は1つだけです。HOKA の日本法人(Deckers Japan)の発表文に、2026年1月〜10月の発売日が書かれていること。この条件に合ったのが、次の3足でした。
表は横に動かせます →
| モデル | 発売日 | 値段 | 重さ | 底の厚さ | ドロップ |
|---|---|---|---|---|---|
| シエロ X1 3.0 | 1月30日 | 38,500円 | 213g | 未確認 | 7mm |
| クリフトン 11 | 7月1日 | 19,800円 | 282g | 42/34mm | 8mm |
| クリフトン PRO | 7月10日 | 22,000円 | 296g | 42/34mm | 8mm |
3足以外の現行モデルの数字は、HOKA の12足を並べた記事にあります。こちらでは「今年どこが変わったか」だけを追います。
シエロ X1 3.0|2年で51g削った、レース用
前の世代から何が変わったか
初代のシエロ X1 は、2024年2月1日の発売でした。そのときの発表文と、今年の発表文を並べます。
| 初代(2024年) | 3.0(2026年) | 差 | |
|---|---|---|---|
| 重さ(28cm) | 264g | 213g | −51g |
| 値段 | 38,500円 | 38,500円 | 0円 |
| 1gあたり | 約146円 | 約181円 | +35円 |
| ドロップ | 7mm | 7mm | 0mm |
| 底のゴム | Durabrasion Rubber を要所に | コンプレッション成型ポリウレタン | 素材ごと変更 |
51gは、初代の重さの19.3%にあたります(51 ÷ 264)。値段は1円も変わっていません。同じお金で、靴の5分の1近くが消えた計算です。
どこを削ったのか。発表文の技術欄で行ごと入れ替わっているのは、甲と底のゴムです。甲はニットから「絡み織りテキスタイル」へ。底は、ゴムを貼る作りから、ポリウレタンを型で押し固めた薄い層へ替わりました。
レース用の靴で、ゴムは重い部品です。地面に触れる面を全部ゴムで覆うと、すべりにくいかわりに重くなる。初代は「必要な所だけゴム」で軽くしていました。
3.0 は素材そのものを替えて、公式の言葉では「軽量ながら優れたグリップ力と耐久性を両立」させた、という説明です。
兄弟のロケット X 3 との違い
HOKA のカーボン板入りレース用は、もう1足あります。2025年7月2日発売のロケット X 3 です。発表文の数字は226g(28cm)・30,800円・ドロップ7mm。
同じ28cmどうしで比べると、シエロ X1 3.0 が13g軽く(226 − 213)、7,700円高い(38,500 − 30,800)。
1g軽くするのに約592円です(7,700 ÷ 13)。商品ページの227gで計算すると差は14g・1gあたり550円になり、どちらで見ても1gが500円を超えます。
13gを42.195kmに直します。1歩を1mとすると片足は約21,098回。13g × 21,098回 = 約274kg。片足につき、これだけ持ち上げる重さが減ります。
この274kgに7,700円を払うかどうかが、2足の分かれ目です。
ほめる所:2年で51g。しかも値上げなし。板もフォームも抜かずに、甲と底のゴムの作り替えでここまで落としたのは、スペック表を読む側として素直に見事です。
世界陸連の承認済みと発表文に明記されているので、公認レースでそのまま使えます。
気をつける所:色は2色、幅の展開は発表文にありません。底の厚さの数字も出ていないので、ほかのメーカーの靴と厚さで比べられません。扱う店は公式サイト・直営店・一部の店だけです。
- 向く人:記録をねらう本番用を1足だけ持ちたい。1gに500円払う意味が自分にある
- 向かない人:練習にも使い回したい。発表文は「大事なレース当日のための1足」と用途をしぼっています
- ロケット X 3 にした方がいい人:底の厚さ(41/34mm)まで公式の数字で確かめてから買いたい
HOKA シエロ X1 3.0
楽天市場で見るHOKA ロケット X
楽天市場で見るほかのメーカーのカーボン10足との比較は、厚底カーボンのスペック表の記事にまとめています。
クリフトン 11|底はそのまま、甲と中敷きを替えた
前の世代から何が変わったか
発表文の書き方が正直です。底については「前作で絶大な信頼を得たボトムユニットを踏襲」。新しくなったのは、甲の布(エンジニアードメッシュ)と、柔らかさを増した中敷きの2つだと書いています。
つまり、クリフトン 10 から 11 への変更は「足を包む側」だけです。地面に当たる側は同じ。クリフトン 10 の重さと厚さは日本の発表文が見つからず未確認ですが、公式が底を踏襲と言っている以上、厚さとドロップは同じと読めます。
では、クリフトンはずっと同じ靴なのか。2023年2月発売のクリフトン 9 の発表文と比べると、まるで別の靴です。
| クリフトン 9 | クリフトン 11 | 差 | |
|---|---|---|---|
| かかとの厚さ | 32mm | 42mm | +10mm |
| 前の厚さ | 27mm | 34mm | +7mm |
| ドロップ | 5mm | 8mm | +3mm |
| 値段 | 20,900円 | 19,800円 | −1,100円 |
| 重さ | 248g(27cm) | 282g(28cm) | 比べられない |
かかとは10mm厚くなり、ドロップは5mmから8mmへ。それでいて値段は1,100円下がっています。2世代前のクリフトンを履いている人にとって、11 は「同じ名前の、かかとが1cm高い靴」です。
ここに発表文を読むときの落とし穴があります。重さの基準サイズが、9 は27cm、11 は28cm。靴は大きいほど重くなるので、数字だけ引き算すると差を大きく見積もります。
世代をまたいで重さを比べるときは、必ずサイズの条件を先に見ます。
ほめる所・気をつける所
ほめる所:幅の展開が広い。発表文では、メンズ10色がワイドあり、黒の2色はエキストラワイドまであります。19,800円で、ワイドも色も選べて、扱う店も PRO やシエロより広い。
3足の中で「買いやすさ」はこの靴が上です。底を変えなかったのも、裏を返せば評判の良い底をいじらなかったということ。
気をつける所:クリフトン 10 を持っている人には、底の違いがありません。甲の当たりと中敷きの柔らかさに不満が無ければ、いまの靴を履きつぶしてからで足ります。
- 向く人:初めての HOKA。クリフトン 9 以前からの買い替え。幅広の足
- 向かない人:クリフトン 10 がまだ新しい。速い日用の靴を探している
HOKA クリフトン
楽天市場で見るクリフトン PRO|9日後に出た、底が別物のクリフトン
クリフトン 11 と何が違うか
クリフトン PRO は、クリフトン 11 の9日後に出ました。前の世代が無い、新しい枝です。だから比べる相手は兄弟のクリフトン 11 になります。
| クリフトン 11 | クリフトン PRO | 差 | |
|---|---|---|---|
| 重さ(メンズ28cm) | 282g | 296g | +14g |
| 重さ(ウィメンズ24.5cm) | 236g | 242g | +6g |
| 値段 | 19,800円 | 22,000円 | +2,200円 |
| 厚さ・ドロップ | 同じ(42/34mm・8mm) | — | |
| フォーム | 圧縮成型の EVA | SCF フォーム(ProGlide) | 別の素材 |
厚さもドロップも同じ。違うのは中身です。発表文によると、PRO に初めて載った PROGLIDE+ は、反発性のある SCF フォームと「アグレッシブ・メタロッカー」の組み合わせ。
底の反りを強くして、足裏で前へ転がる動きを速める作りだと説明しています。
重さは14g増えて、割合では5.0%(14 ÷ 282)。値段は2,200円増えて11.1%(2,200 ÷ 19,800)。重さより値段のほうが2倍の割合で上がっています。
払っているのは、材料の量ではなくフォームの種類だと分かります。
底のゴムの欄も違います。クリフトン 11 は「耐久耐摩耗性ラバー」、PRO は「Durabrasion ラバー」と、区画を分けた「Podular」という配置。
発表文は PRO を「走行距離を重ねるタフなトレーニングに励むランナー」向けと書いていて、14gは長くもたせる側に使われたと読めます。
ほめる所・気をつける所
ほめる所:厚さとドロップをクリフトンと同じにしたのが巧い。かかとの高さの感覚を変えずに、フォームと反りだけを速い側へ振っています。クリフトンに慣れた足が、そのまま履き替えられる数字の並びです。
2,200円の差でフォームが1段上がるのは、3足の中でいちばん割の良い上乗せです。
気をつける所:296gは軽い靴ではありません。同じ HOKA のマッハ 7 は237gで、59gの差があります(296 − 237)。「速い日の靴」を軽さで選ぶなら、PRO ではなくマッハです。
ワイドがあるのは一部の色だけで、発表文にエキストラワイドの記載はありません。扱う店も公式サイト・直営店・一部の店にかぎられます。
- 向く人:クリフトンの高さに慣れていて、毎日の靴をもう少し前へ進む側に寄せたい
- 向かない人:軽さがいちばん大事。エキストラワイドが要る。ゆっくり走る日だけの靴が欲しい
- クリフトン 11 にした方がいい人:初めての1足。2,200円の差で迷うなら、基準になる 11 から
HOKA クリフトン PRO
楽天市場で見るHOKA マッハ
楽天市場で見る2026年の HOKA で、いちばん買う理由がある1足
私が選ぶのはクリフトン PRO です。3足を「今年、底が変わったか」で並べると、理由がはっきりします。
| モデル | 底の変化 | 買う理由が強い人 | 楽天の値段 |
|---|---|---|---|
| クリフトン PRO | フォームも反りも新しい | クリフトンを履いてきた人 | 19,800〜22,000円 |
| シエロ X1 3.0 | ゴムを素材ごと変更・51g減 | 本番用だけを探す人 | 26,400〜38,500円 |
| クリフトン 11 | 前作を踏襲 | 初めての HOKA・9以前から | 17,325〜22,000円 |
変化の大きさだけなら、51g削ったシエロ X1 3.0 が上です。ただ、あれは年に数回のレースの日にしか出番が無い靴。38,500円を、出番の少ない1足に払える人はかぎられます。
クリフトン 11 は、底が前作のまま。良い靴ですが、「今年だから買う」理由は3足の中でいちばん弱い。
クリフトン PRO は、毎日履く靴で、底がまるごと新しく、差額は2,200円。出番の多さと変化の大きさを掛け合わせると、この1足が残ります。
HOKA が「クリフトンの上」という席を初めて作った年、というのが2026年の読み方です。
買わなくていい人も書いておきます。クリフトン 10 を今年に入って買った人は、何も買わなくていい。底は 11 と同じで、PRO との差は履きつぶしてから考えれば間に合います。
よくある質問
マッハ 7 やスピードゴート 7 は、なぜ入っていないのですか
どちらも日本公式の一覧に載っている現行モデルです。ただ、Deckers Japan の発表文の一覧に、この2足の発売日を書いたものが見つかりませんでした。
発売日を公式の発表で確かめられた靴だけ、という条件で外しています。トレイル用も同じ理由で、今年の分は0足です。2足の重さと値段はHOKA の12足の記事に書いています。
シエロ X1 2.0 から 3.0 へは、何g軽くなりましたか
未確認です。2.0 の重さを書いた日本の発表文が見つかりませんでした。3.0 の発表文は「前モデルから大幅な軽量化」とだけ書いていて、数字はありません。確かな数字で言えるのは、初代の264gから213gへの51gです。
クリフトン 11 と PRO は、女性用でも同じだけ差がありますか
差は小さくなります。発表文のウィメンズ24.5cmは、クリフトン 11 が236g、PRO が242gで、6gの差(242 − 236)。メンズ28cmの14gの半分以下です。
値段の差は男女とも2,200円なので、重さを気にする人ほど、小さいサイズでは PRO を選びやすくなります。