シエロ X1 3.0 は、HOKA が「史上最も軽いスーパーシューズ」と書くカーボン板入りのレース用です。2026年1月30日発売、38,500円、28cmで213g。フルマラソンやハーフの本番の日だけに履く靴を探している人に向けた1足で、発表文も用途をレース当日にしぼっています。
シューズオタクの本命
この靴に払うのは、軽さではなく「軽くしても何も抜いていないこと」。発表文の技術欄には、カーボンの板も PEBA のフォームも初代と同じ行が残っている。
入れ替わったのは甲の布と底のゴムの2行だけ。走りを作る部品をさわらずに、外側の皮だけで削った軽さだから、私はこの靴を本番用の第一候補に置く。
この記事の要点
- 発表文の重さは213g(メンズ28cm)と175g(ウィメンズ25cm)。3cmの差で38g
- 兄弟のロケット X 3 より13g軽く、7,700円高い。1g軽くするのに約592円
- 底の厚さと足幅は発表文に無い。色は2色、サイズは男女共用の23.0〜29.0cmと30.0cm
公式の数字|213g・ドロップ7mm・38,500円
レース用の靴は、軽くするほど何かが減るのがふつうです。底のゴムが薄くなる、フォームが減る、板が細くなる。ところがシエロ X1 3.0 の発表文を初代と並べると、減った部品が見当たりません。
まず、HOKA の日本法人(Deckers Japan)が2026年1月30日に出した発表文の数字です。
| 項目 | シエロ X1 3.0 |
|---|---|
| 発売日 | 2026年1月30日 |
| 値段(税込) | 38,500円 |
| 重さ | 213g(メンズ28cm)/175g(ウィメンズ25cm) |
| 底の厚さ | 未確認(発表文に記載なし) |
| ドロップ | 7mm |
| サイズ | 男女共用 23.0〜29.0cm・30.0cm |
| 足幅 | 未確認(ワイドの記載なし) |
| 板 | カーボンファイバープレート |
| フォーム | 高反発 PEBA フォーム |
| 底 | コンプレッション成型ポリウレタン |
| 色 | 2色 |
発表文には「World Athletics(世界陸連)承認シューズです」と2回書かれています。公認の大会でそのまま履ける、という意味です。
売る場所は、HOKA 公式オンラインストア・直営店・一部の取り扱い店。どこの店にも並ぶ靴ではありません。
HOKA シエロ X1 3.0
楽天市場で見る前の世代から変わった所|甲と底の2行だけが入れ替わった
比べる相手は、2024年2月1日発売の初代シエロ X1 です。あいだの 2.0 は、日本の発表文が見つからず、重さは未確認。3.0 の発表文も「前モデルから大幅な軽量化」と書くだけで、数字を出していません。
| 初代(2024年) | 3.0(2026年) | 差 | |
|---|---|---|---|
| 重さ(28cm) | 264g | 213g | −51g |
| 値段 | 38,500円 | 38,500円 | 0円 |
| 1gあたり | 約146円 | 約181円 | +35円 |
| ドロップ | 7mm | 7mm | 0mm |
| 底の厚さ | 39/32mm | 未確認 | — |
| 甲 | エンジニアードニット | 絡み織りテキスタイル | 入れ替え |
| 底 | 要所に Durabrasion Rubber | 成型ポリウレタン | 入れ替え |
| 板・フォーム | カーボンファイバープレート・PEBA フォーム | 同じ行 | |
51gは、初代の重さの19.3%です(51 ÷ 264)。靴の5分の1近くが消えて、値段は1円も動いていません。
消えた51gを、フルマラソンの距離に直します。1歩を1mとすると42,195歩で、片足は約21,098回。51g × 21,098回 = 約1,076kg。片足につき、1トンあまりを持ち上げずに済む計算です。
ゴムを「貼る」から、樹脂を「押し固める」へ
軽さの出どころは、技術欄を読むと分かります。初代の底は「必要箇所にゾーンラバーを配置」。地面に当たる所だけにゴムを貼って、貼らない所で軽くする作りでした。
3.0 の底は「コンプレッション成型ポリウレタンアウトソール」の1行だけ。ゴムの板を貼るのをやめ、ポリウレタンを型で押し固めた層に替えています。メーカーの説明では「軽量ながら優れたグリップ力と耐久性を両立」。
ゴムは、靴の部品の中で重い側です。貼る面積を減らす工夫には限りがある。素材ごと替えれば、面積を減らさずに重さだけ落とせます。3.0 の軽さは、この発想の切り替えから来ています。
甲も同じ考え方です。編んだニットから、糸をからめて織る「レノウィーブ」の布へ。発表文は「超軽量で通気性に優れ」と書きます。足の甲の動く所には、特許出願中の伸縮ダイナミックヴァンプ。ひもは左右非対称で、甲への圧迫をへらす、という説明です。
兄弟モデルとの違い|ロケット X 3 より13g軽く、7,700円高い
HOKA のカーボン板入りは、ほかに2足あります。レース用のロケット X 3 と、板入りの練習・レース兼用のマッハ X 3 です。
表は横に動かせます →
| モデル | 重さ | ドロップ | 値段 | こういう人はこちら |
|---|---|---|---|---|
| シエロ X1 3.0 | 213g | 7mm | 38,500円 | 本番専用を1足。軽さにお金を払う |
| ロケット X 3 | 226g | 7mm | 30,800円 | 底の厚さ(41/34mm)まで数字で確かめたい |
| マッハ X 3 | 288g | 5mm | 25,300円 | 板入りを練習でも使いたい |
同じ28cmどうしで比べられるのは、ロケット X 3 です。重さの差は13g(226 − 213)、値段の差は7,700円(38,500 − 30,800)。1g軽くするのに約592円かかります(7,700 ÷ 13)。
ドロップはどちらも7mm。板もフォームも、技術欄の言葉はほぼ同じです。違いは底にあります。ロケット X 3 は「グリップ力の高いラバー」、シエロ X1 3.0 は成型ポリウレタン。つまり2足の差は、ゴムを残したか、替えたかです。
- 記録だけをねらう。13gに7,700円を払う意味が自分にある → シエロ X1 3.0
- ゴムの底に慣れている。雨の大会も同じ靴で出る → ロケット X 3
- 板入りの靴が初めてで、本番の前に何度も履いておきたい → マッハ X 3
- 練習も本番も1足で済ませたい → シエロ X1 3.0 にしないほうがいい
HOKA ロケット X
楽天市場で見るほめる所
2年で51g、値上げなし。これだけで、スペック表を読む側としては拍手です。しかも削り方に筋が通っています。板とフォームという「走りを作る部品」は初代の行のまま残し、甲と底という「包む・守る部品」の素材を替えた。軽くするために性能の芯を削っていません。
もう1つは、サイズです。男女共用で23.0cmから30.0cmまで。いちばん上のレース用が、小さい足の人にも大きい足の人にも同じ形で用意されています。
ウィメンズ25cmで175g、という数字も出ています。メンズ28cmとの差は38g(213 − 175)。3cm小さくなると38g、1cmあたり約12.7g軽くなる計算です(38 ÷ 3)。
自分のサイズの重さを、発表文の2つの数字から見積もれます。26.5cmなら、213g − 12.7g × 1.5 = 約194gが目安です。
気をつける所
底の厚さが、発表文に書かれていません。初代は「ヒール39mm/フォアフット32mm」と出ていたのに、3.0 では消えています。ほかのメーカーの靴と厚さで比べたい人には、材料が足りません。
足幅の展開も、発表文にありません。ワイドの記載なし。色は2色だけです。
成型ポリウレタンの底は、初代にもロケット X 3 にも無い作りです。メーカーはグリップと耐久性の両立をうたっていますが、何kmもつかの目安は公式に書かれていません。
ゴムの底で何年も走ってきた人には、判断の材料がまだ少ない素材です。
そして値段。1gあたり約181円は、当サイトの厚底カーボンのスペック表の記事で並べた中でも高い側です。ロケット X 3 は約136円(30,800 ÷ 226)なので、1gにつき45円の上乗せになります。
向く人・向かない人
- 向く人:本番の日だけの靴を1足持ちたい。練習用は別にある。小さめ・大きめのサイズで、最上位のレース用が見つからなかった
- 向く人:初代のシエロ X1 を履いてきた。ドロップは同じ7mmのまま、51g軽い
- 向かない人:1足で練習も本番も回したい。発表文は「大事なレース当日のための1足」と書いています
- 向かない人:ワイドが要る。底の厚さを数字で確かめてから買いたい
- 買わなくていい人:練習用の靴をまだ持っていない人。先に買うのは毎日履ける靴で、候補はクリフトン PRO の記事に書いています
値段と買い方
| モデル | 公式の値段 | 楽天の値段の幅 |
|---|---|---|
| シエロ X1 3.0 | 38,500円 | 26,400〜38,500円 |
| シエロ X1 2.0(前の世代) | 未確認 | 26,950〜38,500円 |
| ロケット X 3 | 30,800円 | 27,720〜65,540円 |
扱う店がしぼられている靴なので、楽天に出ている店は多くありません。買う前に、商品名に「3.0」が入っているかを見ます。初代や 2.0 は名前がほとんど同じで、重さがまるで違う靴です。
前の世代が安く残っていたら、という迷いには、こう答えます。重さを公式の数字で確かめられたのは、初代の264gと 3.0 の213gだけ。軽さを買う靴で、重さが分からない世代を選ぶ理由は薄い。3.0 を選びます。
HOKA シエロ X1 3.0
楽天市場で見るよくある質問
サイズ感は? 幅の広い足でも履けますか
発表文のサイズは、男女共用の 23.0〜29.0cm と 30.0cm。29.5cm は書かれていません。足幅はワイドの記載が無く、1種類と読めます。
甲は伸びる「ダイナミックヴァンプ」と非対称のひもで圧迫をへらす作り、というのがメーカーの説明です。幅で迷う人は、扱いのある直営店でいつものサイズと0.5cm上を並べて足を入れるのが確かです。
シエロ X1 2.0 からは、何g軽くなりましたか
未確認です。2.0 の重さを書いた日本の発表文が見つかりませんでした。3.0 の発表文は「前モデルから大幅な軽量化」とだけ書いています。確かな数字で言えるのは、初代の264gから213gへの51gです。
公認の大会で使えますか
発表文に「World Athletics(世界陸連)承認シューズです」と明記されています。底の厚さの数字は発表文に無いので、厚さの規則との関係を自分で確かめたい人は、厚底カーボンのスペック表の記事で規則の読み方をまとめています。
HOKA の3足を今年の変化で並べた話は、HOKA の2026年新作の記事にあります。